薬剤の資格を持つ者達は、薬を使う薬物療法をはじめ、薬を使わない治療を大切にしています。その大切にすることが一体どんなことなのか、その辺をじっくりと考えてみる必要もありそうです。薬を調合するだけが役割ではありません。
薬を使う治療法、いわゆる薬物治療の他にも、薬を使わずに脳や身体を活性化して、残っている潜在機能であったり、生活能力を高める治療法などもあります。そうした情報を薬剤専門の者達も知識として身につけておかなければいけません。
薬を使わない治療法も大切だということを患者さん本人、そしてご家族の皆さんにも説明しなければなりません。まず最初に取り組むことは、家庭内や地域で患者さん本人の役割や出番を作ってあげることです。
特に薬が必要になるのは進行具合が早い疾患になります。がんであったり、認知症などが一例ですが、認知症の場合は進行してしまうと日常生活でうまくできないことや、失敗が多くなります。家族は本人の家庭内での役割や出番を減らしてしまいます。何もしなくていいよという状況を作ってしまいます。そこを薬剤師も分かっていらっしゃいます。
何もすることがなくなれば、ただ呆然と暮らすだけになり、認知機能はさらに低下してしまいます。認知症のみならず、がんでも同様です。薬を使わない治療となると、そうした呆然として暮らすだけの日常生活になることを薬剤専門の方はご家族に伝えるようにしています。
そこで提案することといえば、薬ではなく日常生活に役立つことです。例えば、一緒に買い物に行ったり、洗濯物をたたむなど、簡単なことでも役割を持たせていただきたい、患者さんの存在感を再確認させるチャンスにもなります。
自発性を引き出すことにも繋がることを理解してもらう取り組みを伝えます。
もちろん薬を使わない治療となると、進行の度合いが進みやすいために、認知症やがんの患者さんに対しての対応の仕方というのも、薬剤師にとっては重要なことになります。本人がどんな気持ちなのか、特に記憶障害などが進行すると最近の出来事を思い出す事が不得意になったりもします。
そのため、さっきした質問を忘れてしまったり、同じ質問を何度も繰り返してしまいます。薬剤師はそんなことも分かっているので、本人の気持ちを理解してあげて、イライラもせず、何度も同じことを説明するようにしています。
服薬指導がそのひとつで、どうしたら円滑に運べるか、それを優先してくれます。