一昔前までは薬剤師と言えば、安定して勤務先があり、高給を得られる職業だと思われる方が多かったのではないでしょうか。ところが、近年の環境の変化を受けて、その前提は覆されそうになってきています。とはいえ、薬の専門家として世の中に必要な職業であることは疑いようもありません。それでは、これから先の時代に淘汰されないために、どのようなことが求められるのでしょうか。
近年では薬剤師の数が大幅に増加しており、求人市場においては飽和状態とも言われるようになってきました。また、IT化の進展により、その専門業務である調剤業務の一部がAIに取って代わられるのではないか、とも言われています。
確かに単に薬を調剤したり、能書き通りに使用方法を説明したりするだけであれば、AIにもできると思われるのも無理はないのかもしれません。しかしながら、人とのコミュニケーションを通してでないと見えてこない部分もあるのです。
。
例えば、病院で処方された薬を調剤薬局に取りに来た患者さんが不安そうな顔をしていたら、処方内容をよく理解しておらず、服薬することに抵抗を感じているのかもしれません。また、市販薬を購入しようとレジに持参したお客さんに落ち着きがなかったら、適切ではない用途や容量で薬を使用しようとしている可能性も考えられます。
以上のような感情の機微は、当然ながらAIが判断することはできず、人と人とのコミュニケーションを通じてでなければ感じ取れないものです。これからの時代には、物としての薬を売るだけでなく、患者さんの個を見る目を持つことが医療従事者として求められています。
その気付きを活かして患者さんの健康維持に努められてこそ、薬の専門家としての真髄とも言えるでしょう。
多くの方にとっての薬剤師との関わりは、薬の受け渡しを終えたら完結してしまうものですが、これから先は一人ひとりの患者さんと長期的に信頼関係を築いていける役割が求められています。
一つの病院や医師の元に通い続ける患者さんは多いものですが、同じ薬局に通い続ける患者さんは意外にも多くありません。日頃から薬に関することや健康上の不安などを気軽に相談できる相手として、薬の専門家ならではのアドバイスができる存在となることが必要です。