薬を受け取りに来る患者さんと話をすることはあっても、その後、その患者さんが薬を飲んでどうなったかを知るには、継続して利用してもらうしかありません。薬に関する話をしても、一方通行になることにジレンマを感じる人もいるのではないでしょうか。
今や薬は処方箋を持って、調剤薬局に薬を受け取りに行くのが当たり前になりましたので、そこで薬の調剤を仕事とする人と患者さんとの接点が生まれます。しかしながら、この接点は医師が書いた処方箋の通りに調剤された薬を、決められた方法や時間に飲むことを話すだけであり、患者さんが抱える悩みなどに対応することはできません。薬の種類から病気の内容を推察することはできますが、容体に関して尋ねたとしても、医者でない人に話してもどうにもならないと考える患者さんも、少なからずいるでしょう。そんなときには薬のエキスパートとして医療に関わりたいという気持ちがわいてくるのではないかと思われます。
医療現場においても、かつては治療は医師が、そのサポートは看護師が行うという考え方をしていましたが、今では医療に携わる者が全員集まり、チームとなって働くことが重要という意識に変わってきています。医師が絶対という考え方ではなく、看護師には看護師の経験から気づけることがあり、それを医師に伝えられるようにする環境を整えることが重要だという考え方にシフトしてきています。このチーム医療と呼ばれるスタッフの中には、当然薬剤師も含まれています。薬なしでは何の治療もできませんので、医師の判断を基本としながらも、時には薬の専門家として物申すことができる環境づくりが重視されています。
チーム医療の一員となって仕事をすることと、調剤だけを行っていることとの一番の違いは、薬を通して患者の体全体の様子を、医療スタッフとして経過観察できる点です。当然のことながら、医師とも看護師とも違う視点から患者の様子を診ることになりますので、薬がどう作用しているかがメインになります。用いた薬がどのように作用しているのかを医師に伝え、そのことによって医師がまた治療方針を変更するといった措置が取られた上で改善が見られれば、これぞまさにチーム医療としての真骨頂と言えます。薬剤師にとって、調剤だけを行うのではなく、医療スタッフの一員として仕事ができる転職先が出来上がってきたと言えるでしょう。